それは ずいぶん前に遡るのですが…。
マクロビスイーツの話題を切り出した私に
先輩パティシエが放った一言が忘れられません。
〜ねぇ、それって美味しいの?〜
私は客観的に見て〝よくできている〟と思いました。
だから精一杯に説明しようと言葉を探しました。
が、美味しいか否かは 其々個々人の主観です。
なかなか適当な言葉が見つかりませんでした。
結局、
「なんて言うのかなぁ…ライフスタイルなんですよ」
確かに 味覚的に美味しいに越したことはない。
たっぷりのバターやたまごを使わないことを承知の上だから。
・・・・・・・
先輩は〝美味しいを求めてドコまでも行く〟ような人。
その美味しいの定義にはバター・たまご・牛乳は欠かせない。
それらが〝美味しいの素〟だから。
だから、これらの〝美味しいの素〟を使わないスイーツなど
たぶん考えられなかったと、信じられなかったと思う。
・・・・・・・
7月15日。
ここ数日 お休みをした私が、今朝、一番最初にやったこと。
それは仕込んでいたスコーン生地を焼成することでした。
ベーキングパウダーを使わず、その代替に酒種酵母を使いました。
2〜3日 冷蔵庫内で寝かしていたその生地は、
折り畳んでいる時から、きっと ふっくらに焼きあがるであろうと
想像しやすい感触でした。
こちらが、そのスコーン。
ふんわり焼き上がりましたょ。
しかし!なんか違う…。
そもそもスコーンを美味しいと感じたことのない私が…
それを焼こう!だなんて。
そのうえ 膨張剤を使わず、酵母を使って…などと
所詮、無理がある話なのです。
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この時、先輩が放ったその一言。
〝それって美味しいの?〟
が、脳裏を掠めて行きました。
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先輩の製菓理論(あるいは菓子への思い)には、
必ず「どうしてこれを使うのか?」が
定義されていたに違いありません。
これを使うから…このような食感に仕上がる。
このような食感を生み出したいなら…この材料が不可欠。
などなど…。
なので、要不要論以前に
「添加物止む無し」の考え方の人でもありました。
だから 今 思えば、膨張剤を酵母に置換(代替)するなど
務務(ゆめゆめ)想像だにしなかった、
いぇ、出来なかったことでしょう。
そしてその先に待っている台詞(言葉)は…
それって美味しいの?
・・・・・・・
偏に、美味しいを作るため
もっともっと素材と向き合わなければ…と、
痛感した瞬間でした。